自分の中での源氏物語は、『あさきゆめみし』がベースです。藤壺も、紫の上、葵の上も皆この漫画の世界観で固まっているので、視点が全く違う大塚さんの源氏物語解説はすごく新鮮でした。
『あさきゆめみし』大和和紀作
初期の単行本を購入したのは今から30年前!今でも大事に保管しています。
大塚さんは、その源氏物語の全訳を自身でされるなど、平安時代の女流古典文学への知識も非常に深い方です。源氏物語をテーマにした書籍も何冊も出されていますが、今回こちらの新書を初めて読んでみました。
(いつもの新幹線内でのPHOTO)
読んでまず思ったのが「物語」という言葉の違い。
『源氏物語』以前は、物語にリアルさは必要ない。しかし紫式部はリアルじゃないと物語じゃないと物語を再定義したという視点。
なぜリアルが必要だったのでしょうか?
物語は面白ければ良い訳ではない!?
紫式部は道長の娘、中宮彰子のサロンにやとわれた女房で天皇妃として大貴族の娘を教育する係でした。その時の教育とはどうするべきか?
大塚さんは、自分を大事にする教育という視点があると見ています。
なのでたくさん登場する女性の中でも立場が低い女性に対しての頁が多くて、さらに紫式部以上に(笑)、自分を大切にして良いと強調します。
夕顔は源氏物語の序盤に都合の良い女として登場し、すぐに死んでしまいます。
その前に桐壷更衣(源氏の母)もストレスに耐えれずに死んでしまいます。
悲劇のヒロイン?というところを大塚さんはダメ女として、そうじゃない女性として
藤壺が登場するとします。
当時の宮中での教育上、どんな女性であるべきか?紫式部はあってほしいと考えていたのか?
そこには『あさきゆめきし』とは全く別の源氏物語が描かれています。
この視点で見た場合の源氏物語を道長はどのように読んでいたのか、気になるところです。
※この本では登場人物や源氏物語のストーリーに関しては最小限しか書かれていないので『あさきゆめきし』などまずは源氏物語に触れてから読まれるのがおススメです。