この本は、日経新聞で大塚ひかりさんが書評を書かれていて気になりました。もちろんタイトルも自分の興味をそそるものなんですが、平安文学の大塚さんが古代史!?っと思ったのが購入のきっかけです。
大塚ひかりさんについては1冊ブログで紹介してます。
本題の冨谷さんは京大名誉教授で、専門は中国法制史の中国史学者です。その方が日本の古代史をどうみるという視点で書かれています。
もっともインパクトがあるのはタイトルにある「漢委奴国王」の読み方。これは志賀島で発見された金印の文字のことですが、自分が小学校で歴史を習って以来40年、それ以上にもっと以前から読み方は、
「漢の倭の奴の国王」でした。
冨谷さんは中国古代史の立場からそうじゃないと指摘します。「倭の奴の」ではなくて、「倭奴(わど)」と捉えるのです。
なるほど、確かに言われてみれば、なんでこんなに「の」を入れるんだろうなと思いつつもその違和感を感じなくなっていました。
しかし他を見渡せば、中国では、匈奴(きょうど)という表現はあるし、魏志倭人伝で登場する国の名前からも、彌奴国、祖奴国、蘇奴国、華奴蘇奴国、鬼奴国、烏奴国、狗奴国と国を表す文字との組み合わせで表現されています。例外は奴国が2回登場してくるところだけ。
そうすると新ためての読み方は、
「漢の倭奴国(わどこく)の王」となります。
つまり日本への蔑称としての「奴」で、倭と倭奴は同じ意味となるのです。そうすると金印は、奴国王に与えられたものではなく、倭国王に与えられたと捉えることになります。これは衝撃的でこの詳細を解説してあるだけでもこの書籍の価値は十分です。
さらには、王と国王の違いについても指摘があります。中国古代史の視点からすると、朝貢する周辺国は国王と名乗れない。この点からも、
漢の倭の奴の国王 ではなく
漢の倭奴の国王 でもなく
漢の倭奴国の王 とすべきという指摘です。
ご興味のある方にはぜひ読んでいただきたいおススメできる1冊です。