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ティラノクロミス ニグリヴェンター

Tyrannochromis nigriventer
ティラノクロミス属の中で最も一般的な種と言えますが、しかしその奥深さは底知れず、体型から体表斑紋形状まで実に様々で、複数匹の飼育では把握したとはとても言えません。本種のヴァリエーションを愉しむだけでも何年にも渡って充実したシクリッドライフを送ることができる時代がありました。
本種は、Ty属の中でもっとも発色が容易でした。Ty.マクロストマなどが煮え切らない状態が続くのに比較して、雌雄の判別は付きやすく、ある程度のサイズになれば、混泳水槽内でも発色して主張し出します。とはいうものの、他魚に執拗なちょっかいを出す訳でもないので、飼いやすいです。また、市場に流通している個体数も一番多いため、シクリッドを扱っているショップであれば入手も容易でしょう。


●繁殖について
本種のブリードは比較的簡単と思います。成熟が他のTy属に比べてに早い傾向があり雌雄を揃えやすいことや、性格が見た目と比較して温和なところが理由と思われます。私自身、何度か食卵に悩まされましたが60匹程採ることができました。ただし注意したいのは、前述したようにヴァリエーションの豊富さから、同じロットでの入荷でないと同種ながらハイブリッドになってしまう点です。本種の場合は、採取地域を合わせてこそ、ブリードが楽しめると思います。

●細いシルエットな個体(同一個体で3枚)
一般的にはもう少しゴツい感じで模様もまだらになります。この個体は成熟後は腹部が黄色くなる面白い個体でした。


●Ty.マクロストマとの混同

ヴァリエーションの豊富さから、同属のTy.マクロストマと混同するケース(Ty.ニグリヴェンターであるのにTy.マクロストマとされている)がありますので下記に混同されるタイプを掲載します。

このタイプはまらだ模様よりは縦ライン(PHOTOとしては横に見える背骨に沿ったライン)が目立ち、Ty.ニグリヴェンターではなく、Ty.マクロストマとして流通しているでしょう。


●Ty.ニグリヴェンター南部型について
正式には、Ty.ニグリヴェンターの地域変異として南部型(=southern)が認識されている訳ではありません。しかし明らかに傾向が違うタイプが存在しますので、趣味の世界を追求する上で区別されていました。ただ現在は個体の入荷自体が無いため無意味になっていますかね。このタイプの入手は非常に困難で、湖南部から採集しなければならないので、グラント便でしかほぼ入手はできません。さらにその場合の入荷名は、'Ty.マクリケプス_産地名'という表記が多く、最初は混乱します。
ちなみにグラント便というのは2018年に千原兄が訪問した番組登場のファームからの入荷便のことです。

特徴としてはTy.ニグリヴェンターの中でもっとも顔つきが滑らかな印象です。個体差がありますから傾向の域を出ませんが、斑紋状のタイプがもっともゴツゴツとした顔つきで、ライン状になるに従いノーズがシャープに、そしてsouthernでは非常に優しい顔つきになるようです。
ただし実際の入荷したばかりの仕分前状態では、それもどこまでがTy.マクロストマでどこからがsouthernか見紛うくらい特徴を少しずつ含んだ個体が見られます。この状況を見ると自然下でのハイブリッドの結果が、southernではないかと推測します。グラント便ではこのように識別できない群を指してTy.マクリケプスと総称していたようです。

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この2カットがsouthernです。まらだ模様よりは2本の縦ラインが太く明瞭で、若魚段階では縦ライン下腹部が腹黒となります。発色段階では腹部は黄色く発色しました。

最後に今回登場の個体が揃ったカットを。

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・前・・・Ty.ニグリヴェンター
・間・・・Ty.ニグリヴェンターサウザン
・奥・・・Ty.ニグリヴェンター
大型アフリカンシクリッドを飼育すると多くの人がハマってしまう、Ty.ニグリヴェンター。書き出すと尽きませんのでこの辺で。