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サブ3.5ランナーのマラソン記録、古墳を楽しもCHANNEL!で伝えきれないこと

IntCal20がもたらす考古学への衝撃

永らく考古学は、緻密な遺物の相対的な編年の中に目的とする対象物を置いて年代や地域の違いを明らかにしてきました。これに対して炭素14半減期を利用した炭素14年代測定法は、編年は関係なく絶対的な年代を明らかにできる可能性があるとして、千葉県佐倉の歴博が中心となり研究が進められてきました。この炭素14年代測定法の影響を古墳時代は大きく受けることになります。

2020年はこの点で大きな変化点になり得る年でした。
晦日は大雪巣ごもりしているので、この点を自分の整理も含めて書いてみます。

●Q.古墳時代はいつから?
この点は、箸墓古墳からという意見が大勢を占め、一部纒向型前方後円墳から始まったとする意見がありますが、纒向遺跡内であり、箸墓古墳からか、その前からか、の程度で大きな相違はありません。ここに炭素14年代測定が加わると2011年に歴博は、箸墓古墳の築造時期を「240年~260年と捉えるのが合理的」と論文を発表します。

箸墓古墳

この発表は、古墳時代は240年から始まった?となり、魏志倭人伝には邪馬台国卑弥呼は248年に亡くなったと記述されていることから、卑弥呼古墳時代の人で、その墓は箸墓古墳?っと邪馬台国畿内説に有利な働きをします。

桜井市はひみこちゃんリリース

ゆるキャラ「ひみこちゃん」は2012年頃登場。
確定していない邪馬台国桜井市にあると、市として宣言するようなものですからこの決断は大変だったと思います。ここに少なからず影響を与えたのは、歴博による炭素14年代測定の結果発表でしょう。

●較正曲線の最新版「IntCal20」リリース
炭素14年代測定法は炭素14半減期を用いる訳ですが、絶対的なものではありません。
まず半減期も幅があり5,730年±40と言われています。
また炭素濃度はいつの時代も一定だった訳ではなく、宇宙線の量が多かったり、海水の影響を受けやすい地域の場合は変化が大きく理論値で計るには限界があります。ここで登場するのが、「較正曲線」というもの。さらにはこの較正曲線の前提となるデータは継続的に蓄積されているので、不定期で更新された"最新"較正曲線なるものがリリースされます。つまり前提条件が変化する訳です。
コロナ禍で話題にほとんどなりませんでしたが、ひっそりと今年8月に最新版が公開sれました。これが「IntCal20」というものです。

●IntCal20の内容

歴博サイト内にニュースリリースとしてリンクがありました。
ニュースリリースの主旨としては、国際的な指標となるデータに日本の樹木年輪のデータが採用されたということですが、文末に以下のように記述があります。

弥生から古墳の資料の較正年代が,より高い精度で求められるようになります。これまでの測定結果をIntCal20に基づいて較正し直すと,年代観が大きく見直される可能性もあります。

読み込む必要がありますが、今回のIntCal20で箸墓古墳の年代を確認すると、4世紀前半前後の可能性が浮上してくるのです。どんどんと年代を早まり限りなく卑弥呼の時代の墳墓とみなされつつある箸墓古墳はどう再評価されるのか?
箸墓古墳の被葬者について、卑弥呼?台与?と口にしてきた考古学者はどうコメントするのか?
ひみこちゃんというゆるキャラによる地域創生を目指す桜井市はどうするのか?

本格的な考察は2021年以降ゆっくりとでしょうけど、IntCal20がもたらす考古学への衝撃は今年一番ではないでしょうか?