Slow Life Slow Fish

サブ3.5ランナーのマラソン記録、古墳を楽しもCHANNEL!で伝えきれないこと

楯築墳丘墓:倉敷市(2020.7.31)

楯築墳丘墓は王墓の丘史跡公園の中にあります。このエリアだけで楯築地区以外を含めて古墳が60基あるということなのでまさに王墓の丘。普通は車で来るんでしょうが、吉備津駅から歩いて(走って)到着しました。

f:id:wild-o-blue:20200903211418j:plain

f:id:wild-o-blue:20200906103212j:plain

酷暑の中、厳かな気持ちになり坂道を少し歩くと案内板があります。楯築古墳の測量資料が掲示されています。

f:id:wild-o-blue:20200906103419j:plain

現在は、2つの突出部は破壊されてない状態。東西突出部は、給水塔が建っていて残念な状態です。それでも中心部分にある"巨石"の姿に期待して先を進みます。

f:id:wild-o-blue:20200901210004j:plain

ではいざ中心部へ!

 

●巨石が立つ異様な風景

f:id:wild-o-blue:20200903211423j:plain

木々の枝葉に遮られた先を歩いていくと程なくして立石が見えてきました。
訪れる人もいなくセミの鳴き声だけが響く中、「これが楯築墳丘墓か!」という感動の瞬間。弥生時代最大の墳丘墓だけあって、中心部が広く、巨石が祠の周囲に異様な雰囲気で立っています。かつて墳丘墓の調査を行った岡山大学の故近藤先生は、「大きさといい、巨石といい、ご神体といい、あまりにも異様で、私の常識をはるかに超えるものであった」と述懐されています。
私自身予備知識をもった上で赴いていても、想像を超えていました。

f:id:wild-o-blue:20200906104618j:plain

祠が巨石の中見混ざっていましたが、これが楯築神社の本殿となる模様。かつて祠(大正時代に作られた)の中に納められていたご神体は別の倉庫へ移動しています。

f:id:wild-o-blue:20200906104633j:plain

f:id:wild-o-blue:20200906104644j:plain

巨石は背の高さを超え2m以上の大きさです。触ってみた感覚は、あまり古い感じはなくこれが弥生時代の石か!?という感じ。

●特殊器台、特殊壺による畿内とのつながり
現地では見ることができないものですが、楯築墳丘墓からは、特殊器台、特殊壺と呼ばれる古墳へつながる重要な特徴が見られます。岡山市埋蔵文化財センター資料より転載します。

f:id:wild-o-blue:20200906165533j:plain

このように特殊器台、特殊壺とうのは後の埴輪につながっていきます。そのルーツは吉備の弥生墳丘墓だということが判っており、楯築墳丘墓でも出土が確認されています。なんと楯築墳丘墓と最初の巨大前方後円墳である箸墓古墳はこのようにつながってしまうんですね。被葬者はどれだけ影響力をもった人物だったのでしょうか。

【POINT簡単に整理】
結構わかりづらい前提情報が出てくるのでPOINT整理します。
古墳時代の始まりは、纒向型前方後円墳からとするか、箸墓古墳からとするかの違いはあっても纏向が始まり。ここは結論に至っていなくて考古学者により見解が違う。
●楯築墳丘墓はその前段階となるが、特殊器台・特殊壺という祭祀に使った土器が前述箸墓古墳では出土しており交流の跡が見える。
●一方双方中円墳という形状の視点では瀬戸内海を挟んだ高知にある猫塚古墳などへ繋がる想定がしやすくある政治権があったようにも見えるが、一方で同じく貴重な双方中円墳である高松市の猫塚古墳には特殊器台・特殊壺の出土は見られない。
●解明していくために発掘という手段をとるにも、すでに楯築墳丘墓は突出部は破壊されている。

このような状況にある楯築墳丘墓は全国区な露出は至っていない?例えば、静岡の登呂遺跡や佐賀の吉野ヶ里遺跡は耳にしたことがあっても、楯築墳丘墓(楯築遺跡)という名前でピンと来る人はどれだけいるでしょうか?

考古学マニアの一人として、久しぶりに衝撃を覚えた遺跡でした。
実際に現地に赴き遺跡の周辺を含めて歩いてみて土地を感じ、遺跡を体感することをオススメしたいです。

f:id:wild-o-blue:20200906114415j:plain

もしご興味持たれた方で楯築墳丘墓の詳細を手軽に知るには、こちらの書籍がおススメです。遺跡を学ぶシリーズの『吉備の弥生大首長墓楯築弥生墳丘墓』1,500円(税別)。

最後の他中心部だけではなく周辺のPHOTOも。滑落したのか、元々その位置にあったのか不明な巨石がいくつも残っていました。

f:id:wild-o-blue:20200906191535j:plain

f:id:wild-o-blue:20200906191547j:plain

f:id:wild-o-blue:20200906191616j:plain

再びぜひ訪れたい場所となりました。